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趣味とは、仕事に疲れた時の癒し、そして長い老後の最良の友。 いわば人生のオアシスである。(酒井正敬)

「北斎 大いなる山岳」の概要、見どころ、感想!登山好きに是非オススメです!

 

先日、すみだ北斎美術館で開催されている展示会「北斎 おおいなる山岳」を観てきました。

 

この展示会では、日本の浮世絵の巨匠である葛飾北斎とその一門が描いた壮大な山岳風景の数々が一堂に集められており、その独自の画風と卓越した技量から描かれている山々の壮大さや荘厳さに圧倒されてしまいました。

 

自分が登ったことがある山が描かれていたりして、山が好きな人には是非見に行ってほしいと感じた展示会でしたので、今回は「北斎 おおいなる山岳」の概要と見どころについて述べていきたいと思います!!

 

 

 

「北斎 大いなる山岳」の概要

葛飾北斎とは

葛飾北斎(かつしかほくさい)は江戸時代後期に活躍した浮世絵師です(1760-1849)。

 

現在の東京都墨田区に生まれて、幼い頃から絵を描くことが大好きで、19歳の時に当時の人気浮世絵師である勝川春章(かつかわ しゅんしょう)に弟子入りして絵師としての人生をスタートしました。

 

以降70年間、北斎は画業一筋の人生を歩み、絵師としての名前である「雅号(がごう)」を30回ほど変更しながらも、真の絵描きとしての本質を追求し続けました。

 

一般的である「葛飾北斎」という雅号は30代の時に使用していたものです。

 

北斎の作品で最も有名な「富嶽三十六景」は70歳を過ぎてから生み出された作品であり、北斎の半世紀にもおよぶ画家人生の研鑽の成果が凝縮されている名作となりました。

 

90歳で亡くなる直前まで筆を握り、生涯現役を貫いた北斎の作品は、日本のみならず世界でも高く評価されており、当時のヨーロッパの画家たちの間で北斎の画風がジャポニスムとして広がり始め、新たな表現方法を生み出すきっかけともなりました。

 

すみだ北斎美術館とは

今回「北斎 大いなる山岳」を開催しているすみだ北斎美術館についても紹介しましょう。

 

すみだ北斎美術館は、東京都墨田区にある公立美術館です。2016年11月22日に開館したました。

 

葛飾北斎が、現在の墨田区亀沢にあった本所割下水で生まれたとされ、90年の生涯のほとんどをこの近辺で過ごしたことから、ゆかりのある亀沢に北斎の作品を展示する美術館が設立されました。

 

この美術館では、常設展示の他にも、様々な視点と角度から北斎の作品を紹介する企画展が開催されており、今回の「北斎 大いなる山岳」も2023年の夏に開催されている企画展となります。

 

住所:東京都墨田区亀沢2丁目7番2号

アクセス:大江戸線両国駅から徒歩5分、JR両国駅から徒歩9分

休館日:毎週月曜日

開館時間:9:30~17:30

常設展の拝観料:一般400円、学生65歳以上300円、中学生以下無料

 

「北斎 大いなる山岳」とは

今回の企画展である「北斎 大いなる山岳」は、その名の通り、北斎の作品の中で「山」が描かれているものを中心に展示しております。

 

北斎といえば「富嶽三十六景」の富士山の絵が真っ先に思い浮かぶ方も多いと思います。

 

富士山は日本の最高峰であり、古くから信仰の対象となっていたため、数多くの芸術作品の題材として採用されており、北斎も様々な作品で富士山の美しさと力強さを描き出してきました。

 

ただ北斎は富士山だけでなく、現在でも百名山として人気の山々や、江戸時代に作られた人口の山に至るまで、日本全国の様々な山の姿をありのままに描いてきました。

 

現代よりも自然が密接であり、自然に対する畏敬と崇拝の念が大きかったであろう江戸時代を生きた北斎が描く山々の絵は、日本人と山とが深い繋がりを有していたことを、生活・仕事・信仰・伝説などのあらゆる視点から現代に生きる我々に伝えてくれます。

 

この企画展に足を運べば、北斎による多彩な山の表現に魅せられることでしょう。

 

会期:2023年6月20日(火)~8月27日(日)、※7/25から作品入れ替え

拝観料:一般1000円、高校生・大学生・65歳以上700円、中学生300円、小学生以下無料

定休日:毎週月曜日

 

 

 

「北斎 大いなる山岳」の見どころと感想

有名な山から里山まで数多くの山が登場

この企画展は、登山とかけて、〇合目という区切りを設けて作品が展示れています。

 

プロローグ:日本人と山

1合目:富士山から低山まで

2合目:山のくらし、木こり・猟師・採掘

3号目:山と妖怪

 

「プロローグ:日本人と山」では、近代以前から始まる日本人の登山の歴史を、山岳信仰や宗教登山の様子とともに描くことで、日本人と山との精神的なつながりをたどっています。富士講、大山講、立山講の浮世絵は、現代よりも過酷な登山の様子がありありと映し出されております。

葛飾北斎『富嶽百景』

 

「1合目:富士山から低山まで」では、日本の最高峰・富士山をはじめとして、低山として有名な人口山である天保山など、日本各地の山をエリアごとに紹介しています。

登山が好きな人なら登ったことがある山も多いのではないでしょうか。私も男体山、榛名山、妙義山、筑波山、鋸山は登ったことがあり、150年前の人と同じ登山道を歩んだのかと思うと感慨深いものがありました。

葛飾北斎「諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし」

 

「2合目:山の暮らし」では、木こり、猟師、金山の採掘など山中で働き暮らす人々の姿をありありと描き出しています。岩壁でロッククライミングをしながら岩茸を採取する女性の姿は、現代のクライマーにも負けない力強さがありますね。

『北斎漫画』十三編 岩茸取

 

「3合目:山の暮らし」では、山の怪や山に伝わる伝説、またそれらをモチーフとした物語を描いています。当時の人にとって、山は現代よりも神聖な場であり、異界あるいは異界への入口であると考えられていたため、山男や山姥、天狗、鬼といった怪奇な存在に関する伝説や怪談が数多く伝承されております

妖怪山水図

 

3合目まで観て回れば、「山」という存在が江戸時代の人々にとってどれだけ身近で、そして神聖な場所であったのかを感じ取ることができるのではないでしょうか。

 

「富嶽三十六景」、「諸国名橋奇覧」などの、有名シリー

この展示会を回ることで、北斎が描いてきた代表的なシリーズものについても知ることができます。

 

最も有名な『富嶽三十六景」は葛飾北斎の代表作であり、富士山の景観を全46図の大判錦絵にて描き出した版画集です。1831年から1834年頃に版行されたとされ、北斎が70歳代の時の作品となります。その名の通り、富士山とともに当時の人々の姿が生き生きと描き出されており、この展示会でも多く観られます。

富嶽三十六景 尾州不二見原

 

この展示会で次に多く観られるのが「諸国名橋奇覧」のシリーズです。日本全国の珍しい橋をモチーフとした全11図からなる名所絵揃物で、橋のバックに山を描く派手な構図でとても魅力的な作品が多かったです。

すみだ区報 |文化・スポーツ

飛越の堺つりはし

 

『勝景雪月花』は、東都(江戸)・山城(京都)・摂津(大阪)の3地域から、雪・月・花の名所をそれぞれ選び、3組9枚で構成されているシリーズであり、色彩もとても鮮やかで、雪や花などに彩られた風光明媚な山の模様が艶やかに描き出されておりました。

勝景雪月花 東都飛鳥の花

また『北斎漫画』という全15編の絵手本も展示されており、その中でも山の絵が数多く登場しています。

常陸筑波の積雪

 

この展示会を回れば、北斎を代表するシリーズを堪能することができますね。

 

現代の山の写真とセットで展示されている

山の浮世絵の横に実際の山の写真がセットで添えられている点もいいところだと思います。

 

実際の写真と比べてみると、北斎の浮世絵がいかに山の特徴を捉えて描かれているかに気づかされます。

 

デフォルメされているようでしっかりと写実的であったり、まるでドローンを使って撮影しているような俯瞰の視点から描かれた構図など、北斎の芸術家としての底知れない力量を感じることができますね。

 

登山好き学芸員の現地レポート

全ての浮世絵にはではないですが、ところどころで「登山好き学芸員の現地レポート」が添えられており、学芸員の方が自らの登山経験をもとに北斎の山の浮世絵を解説しているところも魅力的です。

 

品川にあり、今は高層ビルが立つ御殿山については「JRの線路越しに眺めるとかつての丘陵を感じられる」と解説したり、橋で繋がれている行道山については「紅葉の時期がオススメ」など、登山愛が伝わってくる解説が心地よく感じます。

 

登ったことがある山だと、「確かに!」と共感できることもあるかもしれませんね!

 

 

 

おわりに

葛飾北斎が描いた山岳風景画の展示会「北斎 おおいなる山岳」の概要と見どころを解説してきましたがいかがでしたでしょうか?

 

北斎の浮世絵は風景だけでなく、人々の生活や信仰、文化も描かれており、作品の中に物語が広がっているようで魅入ってしまいますね。

 

また自分が登ったことがある山も描かれていて、150年前の時代を生きていた人々が踏み固めた登山道を現代を生きる自分が歩いているのかと思うととても感慨深いものがありました。

 

ぜひ、すみだ北斎美術館へ足を運んでいただき、北斎の描いた壮大な山々の魅力を肌で感じてもらえたら幸いです。

 

 

 

本日も拙いブログを読んで頂きありがとうございました!!!Have a nice run!