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趣味とは、仕事に疲れた時の癒し、そして長い老後の最良の友。 いわば人生のオアシスである。(酒井正敬)

「つながらない権利」が労働者を解放する!休みの日は仕事のことは忘れよう!

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デジタルツールの進歩やテレワークの普及により、労働者いついかなる時間、いかなる場所においても仕事をすることが可能になりました。

 

その結果、仕事の時間とプライベートの時間の境界が曖昧になるという問題が起きています。仕事関係の連絡はたとえ休暇中でもあっても対応しなければいけないというのが、日本におけるまだまだ標準的な考え方なのではないでしょうか?

 

欧米ではこのような労働問題に対して「つながらない権利」という考え方が波及しており、労働者が仕事に際限なく縛られる状況の改善が進んでいます。

 

今回はこの世界で広がりつつある「つながらない権利」について解説していきます。

 

 

 

フランスから始まった「つながらない権利」

先ほども言ったように、今の時代はデジタル機器の普及により、24時間、365日、いつでもネットに繋がっている状態になっており、それはデバイスさえあれば、どんな時、どんな場所でも仕事と繋がっているということを意味します。


休暇中でも容赦なく電話やメールが来て、やむなく対応しているという人も少なくないのではないでしょうか。

 

このように、会社員が常に仕事と接続している状態を危惧し、フランスでは率先して「つながらない権利」というものが法制化されました。

 

つながらない権利とは、簡単にいうと、勤務時間外や休日に、仕事上のメールや電話への対応を拒否する権利のことです。


欧州では徐々に広がりつつある考えです日本ではまだ馴染みが薄いのではないでしょうか。

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日本語ではつながらない権利と訳されていますが、正確にあらわすとしたら、「対応を拒否できる権利」や、「オフラインになる権利」といった感じですね。


2016年にフランスで労働法が改正された際に、つながらない権利について盛り込まれたことは世界でも話題になっておりました。英語だと「right to disconnect」ですね

 

2016年に法制化され、2017年より施行されています。


フランスの場合、労働者が50人以上の会社では、労働者と管理者の間で「つながらない権利」の行使条件について、労使交渉を行うことが義務化されました。

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ただフランスの法典には、つながらない権利に関して、具体的にこうすべきという明確な規定はありません。


どの時間、どの場所から、労働者がオンライン対応を拒否できるかは、あくまで労使の交渉によって決まります。

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ただなにも目安もないと、交渉もままならないということで、フランス民主労働総同盟(CFDT)は、「つながらない権利の交渉ガイド」を作成しました。


このガイドによると、「つながらない権利」とは「労働者が常時、特に労働者の休息及び休暇の間、デジタルツールにつながっていないことができること」と定義しています。

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このガイドを元に、労働者がオンラインに繋がっている時間帯を明確にしたり、心と身体の休息を満足にとらせるように、労働者と管理者の交渉によって、仕事の枠組みを定めていきます。

 

そして「つながらない権利」の考え方は、イタリア、カナダ、イギリスなど世界に波及しており、日本でもその動きが始まっています。

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日本における「つながらない権利」の議論

日本でもこの「つながらない権利」の考え方は、コロナ禍のテレワークの推進とともに議論され始めています。


2020年12月に厚生労働省で行なわれた、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」では、このつながらない権利についても議題に上がり、その報告書には以下のように記載されています。

 

テレワークは働く時間や場所を有効に活用でき、育児等がしやすい利点がある反面、
生活と仕事の時間の区別が難しいという特性がある。


このため、労働者が「この時間はつながらない」と希望し、企業もそのような希望を尊重しつつ、時間外・休日・深夜の業務連絡の在り方について労使で話し合い、使用者はメールを送付する時間等について一定のルールを設けることも有効である。


例えば、始業と終業の時間を明示することで、連絡しない時間を作ることや、時間外の業務連絡に対する返信は次の日でよいとする等の手法をとることがありうる。


労使で話し合い、使用者は過度な長時間労働にならないよう仕事と生活の調和を図りながら、仕事の場と私生活の場が混在していることを前提とした仕組みを構築することが必要である」

 

これはまさに文字通り、「つながらない」時間を予め労使で話し合って決めておくことが望ましいということですね。

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この報告書を踏まえて、2021年3月には、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が公表されました。

 

「テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外等に業務に関する指示や報告がメール等によって行われることが挙げられる。


このため、役職者、上司、同僚、部下等から時間外等にメールを送付することの自粛を命ずること等が有効である。


メールのみならず電話等での方法によるものも含め、時間外等における業務の指示や報告の在り方について、業務上の必要性、指示や報告が行われた場合の労働者の対応の要否等について、各事業場の実情に応じ、使用者がルールを設けることも考えられる」

 

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また日本労働組合総連合会は、2020年9月に「テレワーク導入に向けた労働組合の取り組み方針」を策定し「つながらない権利」の獲得に向けて、モデルとなるテレワーク就業規則も作成しています。

1.会社は勤務時間外の従業員に対し、緊急性が高い場合を除き、電話、メール、
その他の方法で連絡等を行わない。


2. 従業員は、勤務時間外の別の従業員に対し、電話、メール、その他の方法で連絡をしてはならない。ただし、緊急性の高いものはこの限りではない。


3. 勤務時間外の従業員は、会社または別の従業員からの電話、メール、その他の方法による連絡について、応対する必要はない。


4. 会社は、会社または別の従業員からの電話、メール、その他の方法による連絡に応対しなかった従業員に対して、人事評価等において不利益な取扱いをしない。

 

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おわりに

まだ日本ではつながらない権利は法制化にはいたっていませんが、独自の取り組みを始めている企業もあります。


三菱ふそうトラック・バスは、長期休暇中に電子メールを受信拒否・自動削除できるシステムを導入したり、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、午後10時以降と休日の社内メールのやり取りを禁止にしたりしています。

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今はこのような企業独自の取り組みに留まっていますが、いずれは国がしっかりと法規制を進めて「つながらない権利」が労働者にとって当たり前の概念となっていくといいですね。


仕事の時間と、プライベートの時間をきっちり分けることこそ、働き方改革の根幹となすべき事柄だと思います!

 

メリハリのついた生活を実現するためにも、「つながらない権利」の動向については注目していきましょう!

 

本内容を動画でも投稿しています。よかったらご覧ください⤵

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本日も拙いブログを読んで頂きありがとうございました!!!Have a nice run!