2023年8月1日に、トヨタ自動車の2024年3月期の第1四半期決算情報が発表されて、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比93.7%増の1兆1209億円となったそうです。
四半期の営業利益が1兆円を超えるのは国内企業としては初めての快挙とのことです。四半期で1兆円ってとんでもないですよね。。国内の従業員にしっかりと還元して日本経済を支えてほしいものです。
利益が伸びた要因としては、半導体不足が緩和されて、生産台数及び販売台数が回復したことが大きかったようです。
今回はトヨタ自動車の決算短信を見てみたいと思います!
皆様も是非トヨタ自動車の決算短信を開きながらこの記事を読んで頂き、トヨタの偉業について理解を深めていきましょう!!
決算短信とは
まず今回見ていく決算短信とは、上場企業が決算発表を行う際に、決算内容の要点をまとめた開示書類のことです。
1Q~3Qに作成するものを四半期決算短信、年度末に作成するものを決算短信と呼びますが、今回は決算短信と呼ぶことにします。
決算短信は、証券取引所が上場規定によって定めたルールに基づいて作成が求められております。
対象の上場企業は、決算の内容が定まった場合に直ちにその内容を決算短信で開示することが求められており、決算後30日以内、遅くとも45日以内に開示することが望ましいとされています。
決算短信については、是非こちらの記事もご参照ください。
決算短信は、企業のホームページや、TDnet(適時開示情報閲覧サービス)という証券取引所が運営しているサイトから閲覧することができます。
なお、トヨタ自動車はIFRS(国際会計基準)を採用しており、日本基準を採用している企業の決算短信とはちょっと内容が異なっております。
私が在籍している会社も日本基準採用であるため、ちょっと見慣れない資料の説明となり、説明が至らない箇所も出てきてしまうかと思われますがご了承ください。
連結経営成績
それではトヨタ自動車の決算短信を見ていきましょう。決算短信はまず最初にサマリー情報という、会社の経営成績や財政状態の概要が一目で分かるようにまとめられたページから始まります。
決算発表は2023年8月1日です。あの世界的大企業が8月1日発表できるのはすごいなと思います。私の会社は8月2日発表でした。四半期報告書は8月10日発表ですね。
その下から決算数値の情報が挙げられていきます。まずは連結経営成績です。2023年4月1日から2023年6月30日の3か月間の売上・利益の累計額を前年同期と比較する形で開示しています。
営業収益
IFRS採用なので勘定項目が少し違いますが、「営業収益」は日本基準での売上高を意味します。百万円単位となっているので、当四半期は10兆5468億円の売上高ですね。ぶっとでいますね笑
営業利益
次の「営業利益」は本業で出した利益のことです。トヨタでいえば主に自動車製造・販売で出した利益であり、投資家も重視するのが営業利益です。
ニュースではこの「営業利益」が1兆を超えたと報道されていましたね。当四半期は1兆1209億円の「営業利益」です。ちょっと桁が違いますね。まだ第1四半期ですよ...。前年同期比93.7%ってほぼ倍増しています。
税引前四半期利益
「税引前四半期利益」は、営業利益に本業以外の損益を加減算したものですね。利息の受け取りや支払い、配当金の受け取り、あとは為替による資産の増減の影響などが加算・減算されています。当四半期は1兆7205億円の税引前四半期利益ですね。
連結損益計算書(PL)を見るとこのようになっている部分ですね。
四半期利益
「四半期利益」は、税引前四半期利益から税金費用を除いた利益ですね。当四半期は1兆3268億円の四半期利益です。
連結損益計算書(PL)を見るとこのようになっている部分です。
親会社の所有者に帰属する四半期利益
「親会社の所有者に帰属する四半期利益」は、企業集団利益のうち親会社株主に帰属する利益のことです。
たとえばトヨタ自動車グループの中にAモーターという会社があり、Aモーターの株式はトヨタ自動車が70%所有し、残り30%は私が持っていると仮定します。
Aモーターが100億円の利益を出した場合、この利益のうち株式所有割合に応じて、トヨタ所有の70%にあたる70億円は「親会社の所有者に帰属する四半期利益」となり、残りの30%にあたる30億円は「非支配持分に帰属する四半期利益」に振り分けられます。
連結損益計算書(PL)を見るとこのようになっている部分ですね。
親会社所有者四半期利益+被支配持分四半期利益=四半期利益となります。
要はトヨタ自動車の株主が支配を及ぼせる範囲で獲得した利益のみを抽出しているわけですね。当四半期は1兆3113億円の親会社の所有者に帰属する四半期利益を出しています。
四半期包括利益合計額
「四半期包括利益合計額」とは、まだ損益が完全には確定していない含み益・含み損も四半期利益に合算した利益のことを指します。
イメージしやすいものでいうと投資有価証券の時価評価ですかね。ある株式を期首に購入した時の価格が100億円であり、期末時点で130億円となっていたと仮定すると、30億円の含み益が生じることとなります。
ただこの株価の上昇分は会計上は以下のよう純資産の増減で処理されるため、四半期利益には含まれません。
投資有価証券 30億円 / 有価証券評価差額金 30億円
この30億円は実際に株式を売却したら以下のように投資有価証券売却益というPL項目を通じて四半期利益に含まれます。期末に130億円で売却していたと仮定しましょう。
現金 130億円 / 投資有価証券 100億円
投資有価証券売却益30億円
なので株式を売却しない限りは四半期利益には含まれないのですが、この株式上昇分の含み益、つまり将来的にはいずれ四半期利益に含まれてくるであろう未確定の損益(その他包括利益)も合算したものを四半期包括利益合計額といいます。
確定した利益:四半期利益
未確定の利益:その他の包括利益
四半期利益 + その他の包括利益 = 包括利益
この包括利益については「要約四半期連結包括利益計算書」に記載されているので見てみてください。上記の株価の変動は「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値変動」に含まれているはずです。
含み益もこの四半期で1兆2269億円増加しているんですね。為替換算差額が大きな割合を占めているのは、今の円安の状況が反映されていますね。
基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する四半期利益
「基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する四半期利益」とは、上述の「親会社の所有者に帰属する四半期利益」を「期中平均株式数」で割ったものです。
期中平均株式数は2ページ目の「発行済株式数」の欄に記載があります。
期中平均とは何かというと、月末株式数平均のことです。4月末が110株、5月末が140株、6月末が200株であった場合、期末の6月末の200株を使用するのではなく、各月末平均の(110+140+200) ÷3か月=150株を使用するということです。
希薄化後1株当たり親会社の所有者に帰属する四半期利益
「希薄化後1株当たり親会社の所有者に帰属する四半期利益」は説明するとなると難しいのですが、ある条件を満たすと株式となる権利を有しているものが存在している場合に、その条件が満たされて全て株式となったと仮定して1株当たり利益を計算したものです。
ある条件を満たすと株式となる権利を有しているものは「新株予約権」や「ストックオプション」、「優先株式から普通株式への転換権」などですね。細かい説明は省きますが、将来的に株式に代わる可能性のある潜在的な株式の発行を加味するわけです。
この潜在的な株式数を期中平均株式数に加算して1株当たり利益を計算をします。まあ厳密にいうともう少し計算過程が複雑なのですが、ざっくりとした説明にとどめておきます。
連結財政状態
続いて「連結財政状態」です。こちらでは会社の保有している資産・資本の状況を開示しています。貸借対照表(BS)の要約ですね。
資産合計
「資産合計(総資産)」は、流動資産と非流動資産(固定資産)の合計、もしくは負債と資本(純資産)の合計です。IFRSなので日本基準のBSと勘定名称が違うのでこんがらがりますね。
要約四半期連結財政状態計算書(連結貸借対照表)上では、一番下の資産合計の数値になります。資産合計は80兆1312億円ですね。もう国家レベルになってきました。
資本合計利益
「資本合計」とは、資産合計から負債を除いた金額で日本基準でいう純資産のことです。負債ではないので返済義務の正味の財産(正味財産)といえます。
要約四半期連結財政状態計算書(連結貸借対照表)上では以下の部分になります。当期末は31兆2744億円ですね。
親会社の所有者に帰属する持分
「親会社の所有者に帰属する持分」とは、上述した「親会社の所有者に帰属する四半期利益」に関連するものです。
Aモーターの例において、Aモーターの利益100億円のうち、30%の株式を持つグループ外の会社に利益の30%を「非支配持分に帰属する四半期利益」として振り分けるといいました。この時の仕訳が以下のようになります。
非支配持分に帰属する四半期利益 / 非支配持分(非支配株主持分)
「親会社の所有者に帰属する持分」は、資本合計から非支配持分を除いた金額となります。つまり返済義務の正味の財産のうち、さらに自社が完全に権利を有している財産ということになりますね。
要約四半期連結財政状態計算書(連結貸借対照表)上では以下の部分になります。当期末は30兆3300億円です。
親会社所有者帰属持分比率
「親会社所有者帰属持分比率」は、「資産合計」のうち「親会社の所有者に帰属する持分」が占める割合をいいます。日本基準でいうところの「自己資本比率」ですね。
当期末でいうと以下の計算になりますね。
親会社の所有者に帰属する持分:30兆3300億円 ÷ 資産合計:80兆1312億円 = 37.85%
配当の状況
「配当の状況」では、前当期の配当金の支払実績と、通期(or来期)の支払予想が記載されています。1株に対して支払われた配当金額です。
2023年3月期 ➡ 前年度1年間の配当金支払実績
2023年4月期 ➡ 当年度1年間の配当金支払実績。まだ1Qなので2Q以降は黒塗り
2024年3月期 ➡ 2Q以降の配当の支払予想。
前年度は、2Qで1株25円、4Qで1株35円の配当支払を実施していたということですね。当年度は爆益を出しているのでいったいどんな配当になるのでしょうか。
連結業績予想
「連結業績予想」は、1Q~3Qは当年度1年間の連結経営成績の着地予想、4Qは来年度1年間の連結経営成績の着地予想を記載しています。
下のほうに小さく書いてある「修正の有無」が「無」となっているので、22Q4末で公表した23年度の業績予想からは変更無しということになります。
単純計算すれば1Qの成績の4倍になりそうですが、計算してみたら以下のような倍率になりました。まだ1Qですし、年間予想を変更するのは時期尚早ということですかね。
おわりに
今回は、トヨタ自動車の決算短信を見ていきましたが、いかがでしたでしょうか。
国内企業としては初めての快挙を達成したトヨタ自動車は世界に誇るべき企業だと思いますが、他の日本企業もトヨタ自動車に追いつけ追い越せの勢いで、日本経済全体が盛り上がっていくといいですね。
皆様がこの記事を通じて、トヨタ自動車の業績向上に関する理解が深めていただくとともに、今後決算書を読む際の手助けとなれば幸いです。
本日も拙いブログを読んで頂きありがとうございました!!!Have a nice run!