最近、仕事において後輩が増えてきて、自分が今までやっていた業務を後輩に引き継いでやってもらい、それをチェックするという機会が多くなってきました。
後輩も未経験の業務となるとやはりミスが多く、チェックして間違っている点を指摘してやり直してもらって、再度チェックしてまだ間違っている点を直してもらって....というの繰り返していると、『これ自分がやったほうが早くない?』と思ってしまうことがどうしてもあります。
私は経理職なので、決算期などの締め切りに追われている時期はどうしてもこの考えが頭の中をよぎってしまいます。思い切って任せるべき業務でも、どうしても自分の手元に置いておきたくなってしまうのです。
そんな時、ネット上でこの『任せるコツ(山本渉)』という本を見つけて、まさに今自分が読むべき本だと思い、即購入しました!!
今回は、『任せるコツ(山本渉)』を読んでみて、私が自分でも実践したいと感じた思考法を5個に絞って紹介します!
任せることに悩んでいる方がいらっしゃったら、是非本書を手に取ってみてください!
著者と本書の紹介
著者の山本渉(やまもとわたる)さんは、学生時代に引きこもりを経験しており、高校を中退した後にアメリカに留学したという異色の経歴を持っています。
大学でマーケティングとエンターテインメントを学び、卒業後は日本に帰国して、国内最大手のマーケティング会社に入社しました。
その会社ではプレイヤーとして結果を残して30代にしてマネジメントに任命されるものの、数多くの失敗を重ねてきたそうです。
その失敗の経験から、マネジメントはチームメンバーの話をよく聞いて考えていることを理解したうえで、最後はメンバーを信じて完全に任せることこそがメンバーを成長させて、さらには組織全体を活性化させると気づいたそうです。
その際の知見をまとめたのが本書『任せるコツ』となります。山本さんの著作はこの1冊のみとなります。
マネジメントの実体験がもとに書かれている本書は、部下や後輩との接し方に悩んでいる全てのビジネスマンに一つの道しるべを示してくれることでしょう!
私が取り入れたいと感じた思考法5選
任せるときの大前提を知る
あなた自身が誰かから何かを任せられたりすることもあると思いますが、気持ちよく頼まれごとに臨めるときもあれば、ちょっと気分が乗らないなあと感じるときもあると思います。
それは相手の任せ方に問題があるのかもしれません。逆にあなたが任せたりする際にも、任せるコツが存在します。著者は頼み方の大前提として次の5つを挙げています。
頼み方の大前提
①意欲創出 ➡ 相手がやりたいと思える文脈になっているか?
②目的の明確化 ➡ なぜ必要なのか理由を伝えているか?
③欲求充足 ➡ 利己的都合ではなく相手にメリットがあるか?
④選択肢の提示 ➡ 断る余白があるか?スケジュールにに余裕があるか?
⑤負担の配慮 ➡ 負担を減らす工夫や相談の余地があるか?
『①意欲創出』では、仕事を受ける側は全ての仕事を面倒と思っているという前提からスタートし、この仕事をやってみようと思ってもらう意欲を、依頼する側が作り出すことが大事と述べています。
「感謝される」、「褒められる」、「自分にしかできない特別な仕事」というような点を説明して頼むことで、相手のモチベーションを高めてあげます。
『②目的の明確化』では、その依頼内容が何のためのものなのかを、はっきりとさせることが大事と述べています。ただの作業は苦痛に感じますが、依頼の目的が明確に伝えられるとその仕事に意義と価値が生まれて参加意識が芽生えます。
『③欲求充足』では、頼み事をする際は「この仕事をやってほしい」というこちらの都合ではなく、「その仕事をやりたい」と感じるようにメリットを提示することが大切であると述べています。
「リーダーになって進められる案件があるんだけどお願いできませんか」「○○さんの営業成績なら、次のステップに上がるためにこの仕事を引き受けてくれないかな」など、相手の欲求を加味した依頼をすると相手のやる気も上がるでしょう。
『④選択肢の提示』では、頼むときには相手が「断る余白」を用意し、断りにくくしない工夫をすることが大事であると述べています。これは相手にスケジュール的な余裕がないのに、その仕事をやらざるを得ない状況を作らないということです。
「仕事なんだから文句言わずやれ」というスタンスは令和では通用しません。それに時間的な余裕がない中で焦ってやった仕事のパフォーマンスは高くならないでしょう。無理な頼みごとが良い結果を生むことはありません。
『⑤負担の配慮』では、先ほどの「断る余白」と関連して、無理な仕事の依頼をしない工夫をすることが大事と述べています。相手が抱えている仕事量を考慮する、相手のスケジュールを配慮する、相手の能力や適性に合った仕事を依頼するなど、相手が嫌々ながら、無理しながら仕事をするという状況を作らないことを心がけましょう。
任せた後のフォローが大事
大前提を念頭に置いて人に何かを任せたときは、任せた後のフォローが大事になってきます。それは「フィードバック」、「感謝」、「評価」の3点だと述べています。
「フィードバック」ですが、部下から上司へのホウレンソウ(報告・連絡・相談)が大事といわれているように、上司から部下へのホウレンソウも大切です。
任せた業務について得られた結果をなるべく具体的に伝えてあげることで、任せられた側には「やってよかった」や「次はもっと頑張ろう」などの気持ちが芽生えてくると思います。
「感謝」については、フィードバックとセットで行うことができますね。任せたのですからそれをやってもらったことには素直に感謝の気持ちを表しましょう。「仕事だからやって当然だろ」というのは無しです。
依頼に対するフィードバックと感謝を伝えられると、任せられた側は達成感や満足感を味わえることでしょう。
また感謝という行為は、感謝した側のストレスを軽減するという研究結果もあります。お互いにメリットしかないので、ドンドン感謝していきましょう!
「評価」については、冷静に、客観的に、基準に沿ってブレないフェアな評価をすることが大事です。
「昨日はこれで良い評価だったのに今日は同じことをしてもダメだった」とか、「自分とあの人は同じことをしているのに、あの人のほうが評価が高い」といったフェアじゃない評価をしているとメンバーのモチベーションに悪影響を及ぼすでしょう。
任せるということはこの「フィードバック」、「感謝」、「評価」までやって完結します。最後のフォローまで責任をもって任せることを意識しましょう。
「自分でやったほうが早い」の限界
任せることが苦手な人は、「自分でやったほうが早い」と考えがちかと思います。まあおそらく本当に自分でやったほうが早いということもあるでしょう。
ただやはり「自分でやったほうが早い」には限界があると述べています。今回は自分でやったことによって早く終わったとしても、長いスパンで見ればメンバーの成長の機会が奪われたことにより、組織全体の能力の底上げの機会が失われてしまうのです。
「自分でやったほうが早い」は今だけの話であり、育成を無視して組織を弱体化させる愚行なのです。マネジメントとしての能力が無いと露呈しているようなものです。不安かもしれませんが、メンバーの可能性を信じて任せてみましょう。
理想は、自分が不要になるほど部下が成長することです。そして大切なのは自分のコピーを作ろうとしないことです。画一的な思考の組織から革新的なアイデアは生まれづらいです。メンバーの個性をと自主性を育てて多様性のある組織を作れるのが優秀なマネジメントと言えるでしょう。
任せることのメリット・デメリット
任せることはメリットもあれば、デメリットもあります。著者は任せることのメリット・デメリットとして次の点を挙げています。
任せることのメリット
・成長を促すことができる
・主体性が高まり自分で考えて動くようになる
・モチベーションが上がる
・この成長の積み重ねで組織全体を強化することができる
・丸投げした側に時間ができて、マネジメント業務に集中できる
任せることのデメリット
・結果が読みにくい
・失敗する可能性が高くなる
・時間がかかる
・クオリティーが下がる
・「丸投げ」した側は無責任と思われる
・過労などメンバーの健康被害が起きる
任せる側はこのデメリットを飲み込んだうえで、相手を信じて任せるという度量が必要となります。でもいざ任せてみると主体性とモチベーション向上のメリットのほうが大きいと感じることでしょう。
注意しなければいけないのは、中途半端に任せてしまうことです。任せたことに途中で安易に細かくチェックをして指導・修正をすることは一見面倒見の良い行為ではありますが、任せられた側にとっては主体性が奪われて、やる気が削がれ、成長が止まってしまう恐れがあります。
多少自分の考えと違っていもそっと見守り、自分で考えさせて、自分で進むことで成長を促しましょう。
任せる技術は褒める技術
「褒める」ことをせずに、「任せる」ことはできないと言っても過言ではないと著者は述べています。メンバーに対してしてあげられることの一番身近な行為は「褒める」ことなのです。
褒めるのは照れくさかったり、褒めるべきところが見つからないと思ってしまうかもしれませんが、うまく褒められないのは「褒め慣れ」していないだけのことが多いです。
褒める技術は、いいところを見つけ出す作業で、例えばとある特徴を見方を変えてポジティブに変換するリフレーミングという手法が有効です。
リフレーミング
・大雑把 ➡ おおらか
・頑固 ➡ ブレない、自分の意見がある
・面倒くさがり ➡ 効率的
・飽きっぽい ➡ 好奇心旺盛
・仕事が早い ➡ 仕事が丁寧で慎重
・失敗をした ➡ 成功に近づいた
また褒めるときは成長を褒めると、「もっと先へ」という原動力になります。そして他人と比べて褒めるのではなく、本人の成長やその人独自の長所を褒めましょう。
任せて、成長を褒めて、また任せて、そして成長を褒めるというループでメンバーの能力を伸ばし続けていきましょう!
おわりに
今回は、『任せるコツ(山本渉)』を読んでみて、私が自分でも取り入れたいと感じた思考法を5個に絞って紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
後輩に思い切って任せることは正直怖いと考えてきましたが、本書を読んでみて任せることは後輩だけでなく自分自身、引いては組織全体を強くするのだと思い、これからは積極的に後輩に任せてみるという意識を持とうと決意しました。
今回紹介した思考法は本書のほんの一部であり、まだまだ刺激的な思考法がたくさん紹介されています。
皆さまもぜひ本書を手に取って頂いて、マネジメントとしての思考法を体得する一助として頂けたら幸いです。
本日も拙いブログを読んで頂きありがとうございました!!!Have a nice run!