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趣味とは、仕事に疲れた時の癒し、そして長い老後の最良の友。 いわば人生のオアシスである。(酒井正敬)

トランスジェンダー選手がオリンピックに参加する際のガイドラインを読んだことありますか?IOCの規定原文を日本語訳しました。

ついに東京オリンピックが2020が開幕しましたね。

 

コロナ禍での開催ということもあり、様々な論争を巻き起こしている今大会ですが、始まってしまった以上はアスリートたちの頑張りを応援しようかと思います。

 

さて東京オリンピック2020で話題になっているニュースの一つに、「元男性のトランスジェンダーの重量挙げ選手が、女性選手としてニュージーランド代表となりオリンピック出場」というのがありますよね。

 

 

news.yahoo.co.jp

 

LGBTに対する姿勢が全世界のあらゆる場所で問いかけられている昨今において、ついにスポーツ界にも波が届いてきたのかという感じですね。

 

スポーツにおいて男女の壁を無くすのは、逆に公平性を欠くのでは?と私は考えてしまうのですが、そこは私の理解がまだまだ足りていないのでしょうかね。

 

このトランスジェンダーの女性がオリンピックに出場できる根拠として、国際オリンピック委員会(IOC)が2015年に公表した規定にて、一定の基準を満たせばトランスジェンダーの選手が女子として出場することを承認したというものがあります。

 

テレビやネットのニュースでもこの規定については触れてはいるものの、実際にどのような文章なのかを紹介しているものがあまりなかったので、今回はIOCのトランスジェンダーに関するガイドラインの原文を皆様と一緒に読んでいきたいと思います!

 

トランスジェンダーとスポーツという課題について、少しづつ理解を深めていける一助となれば幸いです。

 

 

IOCのガイドラインの原文を読もう

2015年のIOCの新規定については、以下のサイトから原文を読むことができます。

 

https://stillmed.olympic.org/Documents/Commissions_PDFfiles/Medical_commission/2015-11_ioc_consensus_meeting_on_sex_reassignment_and_hyperandrogenism-en.pdf

 

今回はこの英文の規定をGoogle翻訳様の力をお借りして、日本語訳していきたいと思います。

 

英訳はかなり怪しいところがあるので、ニュアンスだけ読み取ってください!

 

まずは新規定発表のタイトルを見ていきましょう。

 

英語:IOC Consensus Meeting on Sex Reassignment and Hyperandrogenism November 2015

 

日本語訳:性別適合手術とアンドロゲン過剰症に関するIOCコンセンサス会議(2015年12月)

 

性別適合手術とは、一般的には性転換手術と言われることのほうが多いですかね。

 

心は男性だけど身体は女性、またはその逆といった、心と身体の性別が一致していない方が、外科的手法によってその不一致を変更する手術のことをいいます。

 

分かりやすい例でいえば、男性器や乳房の切除といったものになります。要は身体の性を心の性と合わせる手術のことです。

 

アンドロゲン過剰症とは、女性において男性ホルモンであるテストステロンが過剰に分泌され、男性化兆候を示す状態のことをいいます。

 

ホルモン異常によって、女性なのに男性みたいながっしりした体格だったり、低い声といった男性的特徴が出ている状態のことですね。

 

テストステロン値が高いと身体的能力が向上するため、競技において高いパフォーマンスを発揮することができます。

 

男性と女性を比較した際に、男性のほうが先天的にテストステロン値が高いことから、女の運動の力の差はテストステロン値が大きく起因していると考えられます。

 

要はテストステロン値が男性並みに高い人が女性競技に参加すると、他の女性選手を圧倒してしまう可能性が高いということですね。

 

性別適合手術を受けた人や、アンドロゲン過剰症の人は、他の女性アスリートと比べてテストステロン値が高くなってしまうため、そのような選手が出場する際の公平性を保つための規定及びIOCの見解が、当ガイドラインでは述べられていきます。

 

 

トランスジェンダーに関するガイドライン

ガイドラインについては箇条書きになっていますね。1つずつ見ていきましょう

 

英語:A. Since the 2003 Stockholm Consensus on Sex Reassignment in Sports,
there has been a growing recognition of the importance of autonomy of
gender identity in society, as reflected in the laws of many jurisdictions
worldwide

 

日本語訳:A .2003年の、スポーツにおける性別適合手術に関するストックホルムコンセンサス以来、世界中の様々な法律の分野に反映されているように、ジェンダー・アイデンティティーの自律の重要性への認識は高まっている。

 

英語:B. There are also, however, jurisdictions where autonomy of gender identity is
not recognised in law at all.

 

日本語訳:B.しかしジェンダーアイデンティティーの自律が、法律で全く認められていない国もある

 

英語:C. It is necessary to ensure insofar as possible that trans athletes are not
excluded from the opportunity to participate in sporting competition.

 

日本語訳:トランスジェンダーの選手が、スポーツ競技に参加する機会から除外されないないように、可能な限り保証する必要がある。

 

英語:D. The overriding sporting objective is and remains the guarantee of fair
competition. Restrictions on participation are appropriate to the extent that
they are necessary and proportionate to the achievement of that objective.

 

日本語訳:D.スポーツの最優先の目標は、公正な競技を保証することである。参加の制限は必要な範囲では適切であり、公正な競技の保証という目的のためには妥当性を持つ。

 

英語:E. To require surgical anatomical changes as a pre-condition to participation
is not necessary to preserve fair competition and may be inconsistent with
developing legislation and notions of human rights.

 

日本語訳:競技への参加の前提条件として外科手術を要求することは、公正な競技を維持するという目的のためには不必要であり、発展してきている法制度や人権概念と矛盾する可能性がある。

 

英語:F. Nothing in these guidelines is intended to undermine in any way the
requirement to comply with the World Anti-Doping Code and the WADA
International Standards.

 

日本語訳:これらのガイドラインでは、世界アンチ・ドーピング規定や、WADA(世界ドーピング防止機構)の世界基準の意義を弱めることは意図していない。

 

英語:G. These guidelines are a living document and will be subject to review in light
of any scientific or medical developments.

 

日本語訳:これらのガイドラインは常に更新されていき、科学や医学の進歩と照らし合わせて検討されていく。

 

ここまではガイドラインの前書きですね。

 

まとめると、競技の公平性を保つためにある程度の制限は必要だが、そのためにトランスジェンダーの選手に外科手術を要求することは、現代の法律や人権意識から考えると矛盾が生じるものである、ということを言っていますね。

 

この前書きを踏まえて、ガイドラインの記述に続きます。

 

英語:In this spirit, the IOC Consensus Meeting agreed the following guidelines to be
taken into account by sports organisations when determining eligibility to compete
in male and female competition:

 

日本語訳:以上の理念に基づき、IOCコンセンサス会議は、スポーツ組織が男性競技・女性競技に参加する有資格者を決定する際には、以下のガイドラインが考慮されるべきという旨に同意した。

 

英語:1. Those who transition from female to male are eligible to compete in the
male category without restriction.

 

日本語訳:1. 女性から男性に移行した人は、無制限に男性カテゴリーに参加する資格を有する。

 

英語:2. Those who transition from male to female are eligible to compete in the
female category under the following conditions:

 

日本語訳:男性から女性に移行した人は、以下の条件で女性カテゴリーに参加する資格を有する。

 

英語:2.1. The athlete has declared that her gender identity is female. The
declaration cannot be changed, for sporting purposes, for a minimum
of four years.

 

日本語訳:その選手が、自身のジェンダーアイデンティティーが「女性」であると宣言している。この宣言は、スポーツ競技への参加目的では、最低4年間は変えられない。

 

英語:2.2. The athlete must demonstrate that her total testosterone level in serum
has been below 10 nmol/L for at least 12 months prior to her first
competition

(with the requirement for any longer period to be based on
a confidential case-by-case evaluation, considering whether or not 12
months is a sufficient length of time to minimize any advantage in
women’s competition).

 

日本語訳:その選手のテストステロン血中濃度が、最初の競技に参加する前の少なくとも12か月間は10 nmol/L 以下であること。

(12ヶ月という期間についてはケースバイケースの評価が必要)

 

英語:2.3. The athlete's total testosterone level in serum must remain below 10
nmol/L throughout the period of desired eligibility to compete in the
female category.

 

日本語訳:その選手のテストステロン血中濃度が、女性カテゴリーに出場するための資格を有する期間を通じて、10 nmol/L 以下であること。(※おそらく大会期間中のこと?)

 

英語:2.4. Compliance with these conditions may be monitored by testing. In the
event of non-compliance, the athlete’s eligibility for female competition
will be suspended for 12 months.

 

日本語訳:こららの条件に遵守しているかは、検査によって監視されます。この条件を違反した場合、その選手は女性カテゴリーへの参加資格を12か月間停止されます。

  

長くなりましたが簡潔にまとめると、男性から女性に移行した場合は、血中のテストステロン値を10 nmol/L 以下に保つことで、女性カテゴリーの競技に参加できるという規定なんですね。

 

女性アスリートのアンドロゲン過剰症に関するガイドライン

ここからは、元々女性の身体を持っているものの先天的にテストステロン値が高いというアンドロゲン過剰症の女性に関するガイドラインです。

 

ただしこちらについては、あまり明確に書かれていないので概要だけサラっと説明します。

 

英語:In response to the interim award dated 24 July 2015 in Chand v AFI and IAAF
CAS 2014/A/3759, the IOC Consensus Meeting recommended:

 

日本語訳:デュティ・チャンド選手(インド)が、インド陸上連盟(IAF)、国際陸上競技連盟(IAAF)、スポーツ仲介裁判所(CAS)へ行った提訴に対する中間的裁定に対応して、IOCコンセンサス会議は以下を推奨する。

 

 詳細については以下の記事を読んでみてください。

withnews.jp

 

インドの女性陸上選手であるデュティ・チャンド選手は、インド国内の大会で優勝するなど好成績を残しており、国際大会の代表への道も見えていました。

 

しかしチャンド選手は生まれつきテストステロン値が高いアンドロゲン過剰症であったことが分かり、インド陸上連盟(IAF)は2014年の仁川アジア大会への代表チームからチャンド選手を除外しました。

 

この決定に対してチャンド選手はポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴し、2015年には「テストステロンの値による出場停止」という規定を保留する裁定が出されました。

 

この裁定を受けて、チャンド選手は後の国際大会では女性選手として出場することができました。

 

今回紹介しているガイドラインでは、この裁定に対するIOCの見解が述べられています。

 

英語:Rules should be in place for the protection of women in sport and the
promotion of the principles of fair competition.

 

日本語訳:ルールというものは、スポーツにおける女性保護と、公正な競技原則の推進を目的として作られるべきである。

 

英語:The IAAF, with support from other International Federations, National
Olympic Committees and other sports organisations, is encouraged to
revert to CAS with arguments and evidence to support the reinstatement of
its hyperandrogenism rules.

 

日本語訳:国際陸上競技連盟(IAAF)は、他の国際競技連盟、オリンピック委員会、その他のスポーツ団体の支援を受けて、アンドロゲン過剰症の規則の復活を支持する意見やエビデンスとともにスポーツ仲介裁判所(CAS)に、裁定の差し戻しを要求することを推奨する。

 

英語:To avoid discrimination, if not eligible for female competition the athlete
should be eligible to compete in male competition.

 

日本語訳:差別を避ける為にも、女性カテゴリーへの参加が不適格な場合には、男性カテゴリーへの参加の資格を持つべきである。

 

 

要するに、 テストステロン値が高い選手をそのまま女性カテゴリーにて出場させることは、公正な競技運営や差別等の問題を考慮し、検討し直すべきとの見解を述べたわけですね。

 

実際にこの後、国際陸上競技連盟(IAAF)は、競技によってはテストステロンの値が高い女子選手について、ホルモンを低下させる処置をとらなければ出場を認めないという決定をしました。

 

 

おわりに

ここまで、IOCのトランスジェンダーとアンドロゲン過剰症に関するガイドラインを紹介してきましたが、皆様はどのような感想を持たれたでしょうか?

 

正直、スポーツにおいてこの問題はかなり難しい要素を含んでいると思います。

 

スポーツが身体的能力を競い合うというものである以上、男性・女性というカテゴリー分けをすることは、どうしても必要となってくるでしょう。

 

ここに昨今注目されているLGBTの概念が入ってくることに関しては、若干の疑問を持たざるを得ません。

 

しかし生物学上の数値で機械的に線引きするということも、それはそれで現代の倫理観とは矛盾をはらんでいるような気がします。

 

この課題に対して私自身明確な意見を述べることは正直できません。

 

今回の東京オリンピックを通じて、世界中の人がどのような考えを持っているのかを勉強していきたいと思います。

 

あなたのご意見も是非聞かせて頂きたいです。

 

Laurel Hubbard lifting weights

 

 

本日も拙いブログを読んで頂きありがとうございました!!!Have a nice run!