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「バブル」経済という言葉の由来!『南海泡沫事件』について解説!!

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最近の株式市場が乱高下を繰り返していますね。

 

この不安定な株価の動きは、中国の大手不動産会社の経営悪化に端を発しているということもあり、日本で起きたバブル崩壊を想起させる部分もありますね。

 

現時点では過去のバブル崩壊による大暴落と比べれば、まだまだ値下げ幅も可愛いものですが、これ以上下がらないことを祈ります。


さて、皆様はこの「バブル崩壊」という言葉の由来についてご存知ですか?


なんとなく経済が泡のように弾けるイメージから、自然と誰かが言い始めたという風に考えている方もいらっしゃるのではないかと思います。


私はてっきり日本のマスコミが作った造語なのかなと勝手に思っていました。


実はこのバブルというワード、過去のある事件が由来となっています。


それが1720年にイギリスで起きた南海泡沫事件です。


皆様はこの事件について聞いたことがありますか?今回はバブルのパイオニア、南海泡沫事件について解説していきます

 

 

南海泡沫事件の概要

それではまず南海泡沫事件のざっくりとした概要から見ていきましょう。


南海泡沫事件は、1720年のグレートブリテン王国、つまりイギリスで発生した、株価の大暴落による社会的混乱のことを指します。

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イギリスにてとある理由で設立された南海会社という会社の株式が急落したことをきっかけに、連鎖的にイギリスの株式市場が崩壊しました。

 

南海会社は英語ではThe South Sea Companyであり、この会社のせいで株式市場が崩壊したことから、一連の株価の急落のことを南海泡沫事件と呼びます。。


英語ではSouth sea bubbleですね。バブル崩壊というワードはここが由来となっています。

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ちなみに歴史上、世界三大バブルというものがあり、南海泡沫事件はそのうちの一つです。


あとの二つは、1636年のオランダで起きたチューリップバブルと、1715年のフランスで起きたミシシッピバブルですね。

いずれも近い時期に起きていることから、まだ市場が成熟しておらず、規制も緩い資本主義黎明期に起こるべくして起こったバブル崩壊といえるかもしれませんね。

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南海泡沫事件が起きた時代背景

まずこの事件が起こった時代背景として、イギリスは度重なる戦争によって財政難に陥っていました。


ヨーロッパ諸国間で起きたスペイン継承戦争や、それと呼応して北米大陸で起きたアン女王戦争に参戦したことによりイギリスではどんどんと戦費がかさんでいました。

 

そしてその戦費を賄うために多額の国債を発行してなんとか対応していました。


そして戦争が終結したとき、イギリスには3000万ポンドにものぼる国債発行による借金が残ってしまったのでした。

 

この借金問題を解決しようとした結果として、南海泡沫事件が引き起こされていきます。

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国の借金返済のために南海会社を設立

多額の借金を抱えてしまったイギリスでしたが、戦争で疲弊しているイギリス王家にとって、この借金を返済することは容易ではありません。


そこで、登場するのがイギリスの貴族であり政治家のロバート・ハーレーです。

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ハーレーは、当時のイギリス議会の第一党であったトーリー党の指導者で大蔵卿を務めていました。いわば国の財政の責任者ですね。


国の中枢の立場にいたハーレーは、いかにして国の借金問題を解決するかを考えた末に、国が抱えた借金を返済させるための特権会社を設立することを発案しました。

 

それが1711年に設立された南海会社です。


ハーレーは、代書屋業を営み法律文書に詳しかったジョン・ブラントを南海会社の社長据えます。

 

この南海会社は、国の借金返済を引き受ける代わりに、その借金の5~6パーセントを金利として毎年受け取るとともに、国から南米の独占貿易権を与えられていました。

 

当時の南米貿易は大きな富をもたらす可能性を秘めていたので、この貿易で稼いだ利益で、引き受けた国の借金の返済のための金を稼いでくれ、ということだったんですね。

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しかしながらこの思惑通りにはなかなかいかず、度重なる戦争での周辺各国との国交の悪化や、密貿易、海難事故の多発により、南海会社は貿易業では利益を出すことができず、国の借金を返すどころか、経営の維持すら危うい状況となりつつありました。

 

1718年に、南海会社は貿易偏重の路線を変更し、一発逆転の秘策として、富くじという現代でいう宝くじの販売を始めました。


国営企業ともいえる南海会社だからこそできる裏技ですね。


するとこれが大当たりし、南海会社は貿易の収入を遥かにに超える莫大な収入を得ることになりました。


しかしここで想定以上の収益を得てしまったことが南海会社の社長のジョン・ブラントを調子づかせてしまい、後のバブル崩壊へと繋がる南海計画が始動することとなってしまいました。

 

 

 

破滅へと続く南海計画の始動

富くじで大当たりした南海会社は、翌1719年に、国が発行した巨額の国債を引き受ける代わりに国債と同額の南海会社株式を発行する許可を、政府から勝ち取りました。


ちなみに当時のイギリスでは株式会社の設立には国の許可が必要でした。


国債額が約3000万ポンドであったので、額面にして約3000万ポンドの株式を発行することができるようになったんですね。


そして発行した株式を、国民が所有していた国債と交換していくこととしたのです。要は株式と債務を交換したんですね。


現代でいうと、デットエクイティスワップという取引ですね。


これにより借金は南海会社が全額引き受けたので、国は借金を返済する必要がなくなり、財政破綻の危機を脱することができました。


そして国債保有者は、貸したお金が現金で返ってくるわけではなくなったのですが、代わりに、南海会社という国営であり、高収益が期待できる会社の株式と国債を交換することによって、定期的に配当金を手に入れることができ、南海会社の業績向上により株価が上昇すれば、多額の売却益を得ることもできるようになりました。

 

南海会社も新たに肩代わりした国債の金利を政府からもらえることとなり、三方良しと思える取引になったかのように見えました。

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しかしブラントの考えた南海計画は、ここからが本番だったのです。


ブラントは、株式と国債の交換を、南海会社株式の時価額と同額の国債にて行うことにしたんです。


例えば南海会社の株価が1株300ポンドの時には、額面300ポンドの国債と交換できるという風にしたんですね。


なので額面100ポンドの株式と、額面300ポンドの国債が交換できるのです。

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南海会社の株式は、国債額面を上限として発行しているため、国債額が約30000ポンドなので、南海株も額面30000ポンドを発行しています。


そして、この時価交換を適用すれば、手持ちの株で実質90000ポンドの国債と交換することができますね。


ただ、実際には国債は30000ポンドしか存在していないので、時価60000ポンド分、額面20000ポンドの株式は国債と交換することなく余ることになります。


先ほどの1株時価300ポンドの取引に戻すと、国債の額面と株式の額面の差額である200ポンド分の株式が余ることになります。


南海会社がこの余った株式を市場で売りに出すと、現金600ポンドを手に入れることができ、これはまるまる南海会社の利益となります。

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これが何を意味するかというと、南海会社の株価が上がれば上がるほど、南海会社の利益が大きくなるということですね。


なぜなら株価が上がれば、それだけ市場で販売できる余剰株が増えていくからです。


例えば1株1000ポンドにまで株価が上がった場合、額面900ポンドの株式が余り、それを市場で売ると9000ポンドの利益を得ることができます。


株価が上がれば一気に利益が跳ね上がるんですね。


そのためブラントは株価上昇による利益の増大を狙って、様々な株価吊り上げ策を実行します。

 

株のローン販売や株を担保にした融資を行って、南海株が上昇するほど、株式を買いやすくなる状況を作ったり、配当の増額をうたって株の購買意欲を高めたり、政府のお偉いさんに株を賄賂で贈ったりして、とにかく南海会社の株が熱いというフィーバー状況を作り出していったんですね。


このようなブラントの施策によって、1720年の1月時点では128ポンドであった南海株価は、その半年後の6月には約10倍の1050ポンドにまで上昇したのです目論見通りに株価が高騰し、莫大な利益を得ることができると喜んだブラントでした。

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しかし株式市場はそんなに甘いものではなく、思わぬところから崩壊が始まることになりました。

 

 

 

訪れる株価の大暴落。南海会社の終焉

お金がたくさんあるところに人は集まるもので、南海会社の儲けに便乗しようと考えた人たちが、南海会社を模倣して多くの会社を設立しました。


当時株式会社を設立するには政府の許可が必要だったんですが、無許可の株式会社が乱立することになります。


このブームに乗って設立された会社は、190社にものぼりました。


無許可とはいえ、真剣に事業を起こそうとする起業家もいたんですが、その多くが詐欺まがいの会社だったり、実態の無い会社ばかりでこの時乱立した、「泡のようにできて実態のないペーパーカンパニー」のことは、泡沫会社と呼ばれるようになりました。


そう、バブル経済の語源となったのは、このときの泡沫会社の乱立のことをなんですね

 

無許可に乱立された会社によって、株式市場はさらに過熱していき、南海株はもちろん、市場全体が実態にそぐわない高騰を続けていきました。


ただ実態の無い会社の株を高値で買った人の中には、会社自体があっという間に消え去り、無一文になる人もでてくるという状況で、政府もこの無許可の泡沫会社の乱立が、株式市場に悪影響を与えていると判断し、規制に乗りだします。


1720年の6月に、泡沫会社を規制する法律を制定し、会社の設立に議会の認可を要することを改めて明確にしました。


この規制法の制定には、ブラントが賄賂を贈った政治家の力も影響しており、株価上昇による利益を独占したいブラントの意思も介入していたのですね。


この規制により泡沫会社の乱立は抑えられ、株式市場の高騰は沈静化に向かうと思いきや、想定以上の事態に発展してしまいます。


この泡沫会社の規制を受けて、投資家達は株価の下落を恐れて、所有していた株式を一斉に売りに出したのです。


株式市場は大パニックに陥り、南海会社だけでなく、泡沫会社の株式も軒並み暴落していきました。

 

南海会社の株式は1か月で75%も下落、泡沫会社もその影響を受けて次々と潰れていき、投資に手を出していた銀行まで破産という事態になりました。

 

そして高騰していた株券は一気に紙切れ同然となってしまい、多くの破産者、さらには多くの自殺者を生むこととなってしまったのです。

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万有引力の発見で有名なアイザック・ニュートンも、この暴落に巻き込まれて、結果として20000ポンドもの損失を被ったと言われていますね。


この悪夢のような状況の中、南海会社の経営陣は、暴落の前に株をこっそりと売って自分たちだけは利益を確定していことが明らかになり南海会社の経営陣に対するイギリス国民の怒りは凄まじいものとなりました。


また南海会社が政治家に賄賂を贈って、株価を釣り上げていたことも、民衆の知れ渡るところとなり癒着していた政治家もろとも激しい非難を浴びることとなりました。


南海会社から収賄を受けていた議員は逮捕され刑務所に送られ、ブラントやその他の経営陣たちは、資産の大部分を政府により没収されることになりました。


それでも民衆の怒りは収まらず、ブラントはロンドンの街角で狙撃されて重症を負ったとのことですね。


この南海泡沫事件をきっかけに、株式会社のような大衆から資金を調達して運営する事業には、公正な第三者による会計評価が必要不可欠であると認識され、後の公認会計制度や会計監査制度の誕生へと繋がっていったのです。


そして南海泡沫事件はその後、首相となったロバート・ウォルポールの辣腕によりなんとか収拾し、経済はも回復軌道に戻ったのです。


こうしてイギリス経済を大混乱に陥れ、後世にバブル経済という言葉を残すこととなった未曾有の大恐慌が幕を閉じたのでありました。

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おわりに

ということで南海泡沫事件の解説は以上となります。


時価による株式と国債の交換なんて、どう考えても危うさしかないのに、突き進んでしまったのは、株式市場がまだ未成熟で、経済に対する知見が乏しかったからなのでしょうかね。


そこにどこまでも利益を追求する人間の欲が絡み合うことで、いとも簡単にバブル崩壊が引き起こされてしまうのですね。


ただ300年後も人類は同じことを繰り返しているので、経済というのは人間にコントロールするのが難しいんだということを実感してしまいますね。

 

 

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本日も拙いブログを読んで頂きありがとうございました!!!Have a nice run!