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電通はなぜ給付金業務を再委託にしたのか。経理の観点から考える。

ちまたを騒がせている電通の「持続給付金事業の委託問題」。

 

ニュースが注目しているのは、もっぱら電通が中抜きをしているのではという点です。

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しかし会見にて電通の榑谷典洋副社長は「多額の公金を会社のバランスシートに反映させることは経理部門が不適切だと判断した」という説明もしました。

 

なぜ、電通が直接業務を請け負うことが、電通の経理部門にとって不適切と判断する事態となったのでしょうか。

 

 

 

多額の公金は決算書のどこへいく

もし電通が給付金事業を直接請け負っていた場合を考えましょう。

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電通は国からこの給付金事業の2兆円を受け取ります。

 

この2兆円はすぐに給付金として全国の事業者に送金されるので、電通の収益(売上)とはなりません

 

この2兆円は決算書上「預り金」という負債勘定に計上されることになります。

 

そして事業者に給付金を支払った際に、預り金が解消されます。

 

①国から預かった時

(借)現金 2兆円    /   (貸) 預り金 2兆円

 

②事業者に支払った時

(借)預り金 2兆円    /   (貸) 現金 2兆円

 

預り金とはいったい

預り金とは、その名のとおり、他者から預かっているお金です。

 

普通の会社の経理でよく出てくるのが、従業員の給与から天引きした住民税・社会保険料や、不動産の大家が賃借人から預かる敷金などがあたります。

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①給与からの天引き時

(借) 現金(給与から天引き)  2万円 /  (貸) 預り金 2万円

 

②税金の納付時

 (貸) 預り金 2万円(借)   /  (借) 現金(給与から天引)  2万円

  

もらったお金を、他の誰かに渡すものとして一時的に保有しておく現金のことを預り金といいます。

 

ちなみに、もらったお金をもらった人に返すのが借入金です。

 

電通の決算書を見てみよう

直近の電通の決算書を見てみましょう。

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預り金は流動負債なので、2枚目の負債及び資産のページ → 負債の部 → 流動負債の部、に記載されます。

 

金額が小さい場合は「その他の流動負債」に、他の勘定とまとめられます。

 

預り金で何が悪い!

国から委託された業務で預かった金を貸借対照表に記載することに対して、会計上問題はないはずです。

 

しかし2兆円という額「多額の公金を会社のバランスシートに反映させることは経理部門が不適切だと判断した」という結論に至らせていると思われます。 

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2兆円ですが、貸借対照表上では2,000,000百万円となります。

 

預かる予定のお金:2,000,000百万円

3月末の現金残高:259,761百万円

3月末の総資産残高:3,416,385百万円

3月末の負債残高:2,492,889百万円

 

とても大きい金額ということが分かります。

 

現金8.7倍、総資産:1.6倍、負債:1.8に膨れ上がります。

 

一つの事業によって、数字がここまで大きく変わってしまうのは確かに、会社の実態を表す必要のある決算書としては不適切と考えられるかもしれません。

 

それでも預り金でいいじゃないか!

投資家は会社の決算書などをみて、業績・財務状態を判断し、投資先を判断します。

 

そのために、決算数値を用いた指標を使用します。

 

例えば総資産利益率(ROA)は、会社の総資産を利用してどれだけの利益を上げられたかを示す数値になります。

 

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

 

ROAは資本に対する効率性と収益性を確認する際の指標としても活用されます。

 

総資産が計算に入っているので、給付金の預り金2兆円が貸借対照表に計上されると、前年度と大きく数値が変わってしまい、本業の実態を表しているかに疑問符がついてしまいます。

 

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また負債比率は中長期的な安全性を測るときに使う指標です。

 

負債比率(%) = 負債 ÷ 自己資本 × 100

 

負債比率は、負債の返済余力を判断する指標となりますが、負債残高が計算に入っているので、ここでも実態とはかけ離れた数値となる恐れがあります。

 

結局どうなんだ!?

「多額の公金を会社のバランスシートに反映させることは経理部門が不適切だと判断した」という点についての私の見方は以下のとおりです。

 

①給付金を預り金として計上することは会計上誤りではない

 

②預り金として計上すると、財務諸表に大きな影響を与え、会社の実態を表す決算書としての意義が損なわれる恐れがある

  

まだまだ深堀りされていきそうな電通問題ですが、これからどうなっていくかが楽しみですね。

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